米国の半導体規制は中国を死に追いやる? 中国が「逆転勝ち」の可能性も―米メディア
2022年10月19日
2022年10月18日、米VOA(ボイス・オブ・アメリカ)は、米国政府が対中半導体輸出規制で「勝ちっ放し」の状態になるのかどうかについて展望する文章を掲載した。以下はその概要。
米政府が10月7日に出した新たな対中半導体輸出規制措置では、ハイエンド半導体の輸出規制範囲が10ナノメートル以下から14ナノメートル以下のプロセスにまで拡大されたほか、AIやスーパーコンピューター用演算チップ、128層以上のNANDフラッシュメモリなどの製品も対象に含まれるようになった。さらに、米国人や永住権を持つ者、および米国で法に基づき設立された法人を含む米国の技術人材が米政府の許可なしに中国のハイエンド半導体の開発、生産を支援することを禁止するという切り札まで繰り出してきた。
中国内外のメディアによれば、この規制が12日に発効して以降、アプライド・マテリアルズやKLA、ラムリサーチ、東京エレクトロンの米国籍エンジニアが続々と中国の半導体工場から撤収したという。また、ウォール・ストリート・ジャーナルの16日付報道によれば、中国の上場半導体企業16社に少なくとも43人の米国籍幹部がおり、彼らは中国での業務を続けるか、米国籍を守るかの難しい二者択一に迫られている。
台北にある米国半導体企業の従業員は、「中国に駐在する会社幹部は米国籍中国人が多くなっているが、彼らは中国の半導体工場に駐在しているわけではないので、現時点では撤収の問題は起きていない。トランプ政権時のファーウェイ(華為技術)に対する規制発動以降、ハイエンド半導体で影響を受けているものの、米政府からの許可を得ているので、中国の顧客向けには引き続き出荷を行っている」と語り、米政府の新たな規制についても「会社への影響は限定的」との見方を示した。しかしその一方で、政治的リスクを避けるために昨年から対中輸出を大幅に減らしているとも打ち明けた。
同従業員はまた「半導体業界では、バイデン大統領の方がトランプ前大統領よりも手厳しいと感じているものの、米政府の目的が自国半導体産業全体の競争力を守ることにあると理解しているため、米国企業は短期間のインパクトは甘んじて受ける姿勢だ」と語っている。
一部のアナリストは、米国による対中半導体輸出規制の強化が、販売、製造、技術、人材いずれの面においても中国を「死」へと向かわせる一撃も同然だと見ている。以前はファーウェイ単体をターゲットにしていた制裁がすでに軍用ハイエンド半導体の規制、さらには全面的な封殺へと拡大しており、英フィナンシャル・タイムズは「米国が中国の半導体産業を石器時代にまで戻そうとしている」とまで形容している。
北京の科学技術アナリストで海豚智庫の創始者である李成東(リー・チョンドン)氏は、「米国の対中半導体規制のエスカレートは米国自らも損害を被るものの、半導体製造基盤がなおも脆弱な中国が受けるダメージはさらに大きく、米国が勝利を収めるというのが市場の共通認識だ」と語る。その一方で、長期的に見れば中国がこのまま息の根を止められるシナリオとともに、向こう5〜8年かけて中国が技術の自主性を獲得して「逆転勝ち」する可能性も存在すると指摘した。
李氏はまた、米中間の半導体人材の奪い合いについても言及。招きを受けて中国企業に入った中国系米国人幹部の多くは「米国による規制が解決案を提示していない」ことから、中国にとどまることを選択するはずだとした。
また、台湾の著名ベンチャー投資家である藍涛亜洲の黄斉元(ホアン・チーユエン)氏も「世界で最も多くの半導体人材を抱えているのは米国ではなく、台湾だ。それゆえ、米国による人材規制は中国が米国以外から人材を引き抜くことを阻止しようがない。いたずらに世界の半導体人材の価格を3〜5倍、もしくはそれ以上に釣り上げるだけだ」と語った。(翻訳・編集/川尻)
ソース:米国の半導体規制は中国を死に追いやる?…