台湾、トランプ関税リスクに警戒 最大の懸念は「米国設計・台湾製造」モデルの瓦解

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台湾経済部(経済省)はこのほど、米国への工場移転を検討している台湾企業に対し、パートナー探しを含む支援を提供すると発表した。  トランプ米大統領は2025年2月1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を課す大統領令に署名した。台湾には半導体や電子部品などハイテク製品を生産する企業が多い。多くがメキシコと中国に工場を構えており、台湾当局はトランプ関税というリスクに警戒感を募らせているようだ。  英ロイター通信によると、台湾経済部は2025年2月3日、米国の新たな関税によって影響を受ける企業を支援するための措置を詳述した声明を発表した。その中で、米国への工場移転を希望する企業に対し、投資に適した米国の州、現地の法律、パートナー探しなどの情報を提供すると述べた。  経済部傘下の工業技術研究院(ITRI)も、「台湾と米国の企業間の研究開発及び製造協力の促進に積極的に取り組む」とした。 ■ 台湾経済省「台湾と米国は『ウィンウィン』」  一方、台湾にとっては別の懸念も浮上してきた。台湾製の特定品目を対象にした新たな関税措置が発動されるのではないかという懸念だ。  トランプ大統領は2025年1月下旬、半導体や医薬品、鉄鋼などに対して、新たに関税を課す計画があると述べた。このうち鉄鋼については2月10日、全ての国から輸入される鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課す大統領令に署名した。3月12日に発効する。  加えて、医薬品や半導体についても同様の措置を実施する可能性を示唆した。これにより米国内での生産を促す狙いだ。ただし、今のところ対象となる国・地域については明らかにしていない。  これに先立ち、台湾経済部は「台湾と米国の半導体ビジネスは『ウィンウィン』のモデルだ」との声明を出していた。特に米企業が設計し、台湾企業が製造する事業モデルにおいて、「高い相互補完性を有しており、双方に利益をもたらすビジネスモデルを生み出している」と説明した。  経済部は、「今後の米国の政策動向を注視するとともに、台湾と米国の産業及び利益が、グローバルな課題に直面しても相互に有益な形で発展できるよう、両者間の緊密な連携と協力を図っていく」とも述べていた。  台湾総統府も別途出した声明で、「台湾と米国は半導体及びハイテク分野における協力において『良好で緊密な相互信頼関係』を築いている」とし、両者はウィンウィンの関係だと強調した。

2020年の第1次トランプ政権において、半導体ファウンドリー(受託生産)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は米西部アリゾナ州に120億米ドル(約1兆8600億円)を投じて工場を建設すると発表した。これはグローバルな技術供給網を中国から取り戻そうとする米政府の取り組みにとって大きな成果となった。その後、TSMCは計画を拡大し、総投資額を650億米ドル(約10兆1000億円)に引き上げた。 ■ 2024年の対米輸出、過去最高 台湾財務省  台湾の郭智輝・経済部長(経済相)は2025年1月初め、「台湾の半導体輸出に米国が関税を課したとしても、その技術的優位性から、影響は小さいと予想される」と述べていた。  だが、ロイター通信によると、台湾は新たな貿易摩擦に直面する可能性がある。トランプ大統領は先ごろ米政府機関に対し、米国の継続的な貿易赤字や不公正な貿易慣行、他国による通貨操作疑惑について調査するよう指示した。  特に台湾は、米国との貿易で大幅な黒字を計上しており、その状況が問題視される可能性があるという。台湾の財政部(財務省)によると、2024年の対米輸出は前年実績を46%上回る1113億米ドル(約17兆3000億円)となり、過去最高を更新した。半導体などのハイテク製品の需要が旺盛だったことが要因だ。 ■ 台湾・行政院長「台湾産業の支援策検討する」  ロイター通信によると、台湾の卓栄泰・行政院長(首相に相当)は、トランプ大統領の半導体関税計画について、台湾当局が産業を支援する必要があるかどうかを近く検討すると、述べていた。  より協力的な計画や将来的な支援プログラムが必要かどうかを緊急に検討するという。同氏は、「台湾の世界産業チェーンにおける地位は無視できないものであり、我々は今後もそのような優位性を維持していくことを、台湾の皆様に改めてお伝えしたい」とも付け加えた。  一方、TSMCの幹部は第2次トランプ政権においても米国の「CHIPS・科学法」に基づく補助金の支給が続くとみている。これに先立つ1月中旬、TSMCの黄仁昭CFO(最高財務責任者)は米経済ニュース局CNBCとのインタビューで、「トランプ政権下でも資金提供は継続される見込みだ」と述べた。  同氏は「実際のところ、2024年10〜12月に初期段階分を受け取っている」とも述べ、同社が総支給額の2割に相当する15億米ドル(約2300億円)を既に受け取ったことを明らかにした。   しかし、CNBCによれば、トランプ氏は大統領選挙期間中にCHIPS・科学法を公然と批判し、「代わりに関税が半導体製造を国内回帰させるためのより効果的な戦略だ」と主張していた。トランプ氏は「台湾がアメリカの半導体産業を盗んでいる」とも述べていた。

ソース:台湾、トランプ関税リスクに警戒 最大の懸念は「米国設計・台湾製造」モデルの瓦解(JBpress)