スパコンが10垓年かける計算を、わずか「5分」で完了する──Googleが量子コンピューティングチップを発表
2024/12/11
Googleは、新たな量子コンピューターチップ『Willow』を発表した。
BBCの報道によれば、このチップは従来のスーパーコンピューターが「10垓(10の24乗)年」かかる計算を、わずか「5分」で解く能力を持つとされる。
この驚異的な速度は、創薬、材料開発、金融モデリングなど、私たちの社会を支えるさまざまな分野に革命をもたらす可能性を秘めている。
量子コンピューターは、従来のコンピューターとは異なり、量子ビット(qubit)を用いる。量子ビットは、0と1の両方の状態を同時に持つことができるため、並列計算が可能となり、特定の問題において古典的なコンピューターを凌駕する性能を発揮する。
「エラー訂正」という壁:
30年の挑戦、Willowで突破口は開かれたのか?
量子コンピュータ開発におけるもっとも大きな壁の一つが「エラー訂正」だ。量子コンピュータは外部からのノイズに弱く、計算エラーが発生しやすいため、実用化には、このエラー発生率を極限まで抑える必要がある。
GoogleがWillowで特に力を入れたのも、このエラー訂正だ。
量子ビットの数が増えるとエラー発生率も増加する傾向があるが、Googleの研究者たちはこれを逆転させ「量子ビットの数が増えるにつれてシステム全体のエラー率が低下する」チップを設計し、プログラムすることに成功したという。
Googleの量子AIラボを率いるHartmut Neven氏は、BBCに対し、「これはこの分野が約30年間、追求してきた重要な課題を克服した画期的な成果だ」と語っている。
「まるで、1基のエンジンしかない飛行機を、2基、4基と増やして安全性を高めるようなものだ」とNeven氏。Willowのエラー訂正技術は、量子コンピュータ実用化に向けた大きな飛躍と言えるだろう。
世界が注目する、
量子コンピューティングの未来と新たな課題
この技術革新は、医薬品開発やエネルギー分野など、多岐にわたる応用が期待されている。特に、複雑な分子シミュレーションや最適化問題の解決において、量子コンピューターの高い計算能力が活用される可能性がある。
また量子コンピューターの発展は、国際的な競争の場ともなっている。英国は国家量子コンピューティングセンター(NQCC)を立ち上げ、他国も同様の投資を進めている。
一方で、量子コンピューターの実用化には、依然として多くの課題が残されている。大規模な量子コンピューターの開発には、膨大なリソースとコストが必要であり、商業的な応用が現実のものとなるまでには時間を要する。
また、技術の発展は新たな課題も突きつける。一つは、セキュリティの問題だ。
量子コンピュータは、現在普及している暗号技術を容易に破ってしまう可能性がある。もし悪意のある者によって利用されれば、社会に混乱を招きかねない。量子時代の到来を見据え、私たちは今から新たなセキュリティ対策を構築していく必要がある。
途方もない「10の20乗年」という時間を5分に短縮するほどの革新的な技術は、私たちの想像をはるかに超えた未来を創造するかもしれない。
しかし、その未来は私たち自身の手で築き上げていくものだ。技術の進歩と倫理観、そして未来への責任を胸に、私たちは量子時代という新たな章へと歩みを進めていかなければならない。
ソース:Google、量子コンピューティング・チップ『Willow』を発表。量子エラー訂正で革新へ | TABI LABO